君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
その日の夜も、次の日の土曜の夜も、流人は送別会で明け暮れた。
きゆもたまに顔を出したが、自分の引っ越しの準備もあるため、そんな飲んでばかりはいられない。
明日には出発という忙しく過ごすはずの日曜日の朝、きゆの家に不思議な訪問者がやって来た。
「きゆちゃん、準備するよ」
そこにいたのは、薬局に勤める峰子と、老健施設で一番仲良くしているスタッフの明美だった。
「準備するって、何を??」
峰子と明美はきゆの家にズカズカ入って行き、きゆの母親に目配せしてきゆを連れて部屋に閉じこもった。
「きゆちゃん、ドレスを出して」
「ドレス?? 何の?」
「先生にもらったウェディングドレスに決まってるじゃない」
きゆはわけが分からない顔をしていると、峰子がニヤニヤしながら教えてくれた。
「今からきゆちゃんと先生の結婚式を挙げるんだから、ほら、早く準備しなくちゃ」
きゆは、狐にでもつままれているような気分だった。
結婚式?? どこで??
疑問で渦巻く頭の中を必死に整理しているとあれよあれよという間に、ウェディングドレス姿の自分がいた。
「もう、なんて素敵なの!きゆちゃん、可愛い。
あ、それより、今度は髪形だ、明美ちゃん、お願い」