君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆはただひたすら車を走らせた。
そして、病院の駐車場に車を入れ込むと、やっと流人の顔を見た。
流人は前よりも髪を短く切っている。
切れ長の大きな目は、機嫌が悪いせいかきつねのように釣り上がって見える。
「ってかさ……何で俺から逃げてんの?」
「逃げる? 誰が? 誰から??」
流人は運転席に座るきゆの顔をつかんで自分の方に向かせた。
「誰が?誰から?
きゆが俺からだろ?
勝手に俺の前からいなくなんなよ…」
きゆは流人の手を払いのけた。
「私達はもう別れたの。
恋人でもないただの赤の他人なのを忘れないで」
きゆはそう言うと、車から降り病院へ入って行った。
流人は出て行くきゆを見送って、小さくため息をつく。
きゆの心はまだ俺から逃げていないのは分かったけど、どうすうれば前みたいに戻れるんだ?
流人はそれでも久しぶりにきゆを見て、確信を得ていた。
俺はきゆ以外はあり得ない、何があってもきゆを手離さないからな……