君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「俺が、ここに何をしにきたか、マジで分からない?」
流人はきゆを診察ベッドの上に座らせ、自分はコロコロのキャスター付きの丸椅子に腰かけると、滑るようにきゆの目の前に来た。
きゆは、目の前にいる流人の熱い視線からすぐに目をそらす。
「………分からない。
でも、きっと、院長先生が不在で人助けで来てくれたって信じてる」
流人は自分から目をそらしているきゆを切なそうに見た。
そして、きゆの小さな手を自分の手で包みこむ。
「俺の事を許してほしくて、それに、ちゃんと話を聞いてもらいたくて、ここに来た」
きゆは流人の手から自分の手を引き抜き、目をそらしたままつぶやいた。
「何も聞きたくないし、それに、そんな陳腐な理由でここにきたのなら、東京へ帰ってほしい……」
流人はまたきゆの手を引き寄せた。
「だろ?
そう思って一年にしたんだ。
簡単にきゆは俺に心を開かないだろうから、一年かけてゆっくりときゆに分かってもらいたいってね」
きゆはそれでも顔を背けたままだ。
流人は、またきゆの顔に手を当て、無理やり自分の方に向かせた。
「きゆが許そうが許さまいが、どっちみち、一年経ったら連れて帰るから」