君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「たまたま、役場のホームページを見たら看護師の募集案内が出てて、なんか東京の生活にも飽きてきてた頃だったから、親孝行ついでに帰ってきたみたいな感じ。
ま、半分、勢いでかな…」
きゆより10歳年上の峰子は、きゆの事をよく知っていた。
3人兄妹の一番末っ子のきゆは大人しく気の優しい子供だった。
「そっか…
うちの薬局はここの病院の薬の調剤もやってるから、何かあったらすぐに相談にきて」
「……うん、ありがとう」
きゆは笑顔で手を振って出て行く峰子を見送った。
そして、誰もいない待合室の椅子に座り、窓から見える青空をぼうっと見た。
ここに帰ってきた理由は単純なもの…
大好きだったあの人を忘れるため…
流人とつき合っただけでも夢を見させてもらったのかもしれない。
小さな島で生まれ育ったこんなちっぽけな私が、池山総合病院の跡取りドクターと結ばれるなんて、地球がひっくり返ってもあり得ないことだもの。