君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



きゆは流人の顔を見た。
間近で見る流人の目にはやるせなさが浮かんでいる。
きゆはずっと堪えていた涙が一粒こぼれた。


「流ちゃん……

ううん、流人先生……

東京では、私達は恋人同士だったかもしれないけど、この島ではただの医者と看護師…
流ちゃんと私には未来はないの。
それは一番よく流ちゃんが分かってるでしょ?

だから、これから一年間は、この島の人達のために、一緒に働いてほしい。
それが嫌だったら、東京に帰ってもいいよ…

私は、この島から、この先出ることはないから…
もう、そう決めたの……」


流人は目だけで天井を仰ぎ、深くため息をついた。
きゆのシミ一つない綺麗な頬の肌を優しく撫で、こぼれる涙を指で拭きとる。

……もう少し顔を近づければ、きゆにキスができるのに。

流人はそう思いながら、優しくきゆを抱きしめた。


「分かったよ…

でも、この一年で俺達はまた恋人同士に戻る。

それは、絶対、譲らないし、きゆは誰にも渡さない。

でも、まだ今は、友達以上恋人未満で我慢してやるから」


きゆはクスッと笑った。

俺様流人はこの島でも健在らしい………








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