君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人が住む予定の住宅は、村営住宅の中でも一番奥まった場所にあった。
海が見える高台を求めて作ったらしいが、周りには畑と森しかない。
でも、住宅はとても大きく、外国の映画に出てくるようなお洒落な洋館スタイルだった。
二人は広すぎる駐車場に車を停めて、恐る恐る大きな玄関のカギを開けた。
重厚な玄関の扉を開けると、大きなリビングルームが目の前に広がり、その先には海が見下ろせるウッドデッキタイプのベランダが見える。
「流ちゃん、見て。
凄いよ、わ~、綺麗~~~」
はしゃいでいるのは、きゆ一人だった。
流人は全くテンションが上がっていない。
「ほら、キッチンもすぐに生活ができるように全てが揃ってるし、カーテンも寝具も全部ちゃんと準備してくれてるよ。流ちゃんみたいな独り者には最高じゃん」
きゆがそう言って流人を見ると、疲れたふりをしてソファにうなだれて座っていた。
「俺、ここに住みたくない。
だって、この周り、何にもないんだぞ。民家も店も街灯も何もない。
こんな広い家、今は昼間だからいいけどさ、夜になったら、怖いよ、怖すぎ…
きゆが一緒に住んでくれるんだったらいいけど、一人なんて絶対無理。
俺、寂しすぎて、一晩で孤独死する自信がある」