君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「きゆのコスプレが毎日見れんの?」
4月1日の久しぶりの開院の朝は、極上にいい天気だった。
きゆは病院が閉まっている間に、役場の保健課の人に医療事務のノウハウを教わった。
今までは、この病院の院長の奥様が看護師の仕事も事務の仕事も両方やっていたため、受付に事務専用の人を置く必要はなかった。
きゆは医療事務の資格を持っていない。
しかし、こんな小さな病院ではオールマイティーに何でもこなしていかなければならなかった。
そのため、医療事務の資格を取るために、きゆは日夜勉強に励んでいる。
でも、いざ、初めて一人で受付の仕事をするとなると、なんだか少しだけ緊張していた。
きゆはいつもより早くに病院に出勤した。
所々に、流人からのプレゼントのバラの花を花瓶に飾る。
それだけで、殺風景な待合室がパッと華やいだ。
流人はまだ院長室から出てこない。
院長室を勝手に改造して生活ができる程度の空間に変えた流人は、クッション材の硬いソファにはみ出る足を伸ばして寝ているらしい。
きゆは流人のタイミングでここに出てきてくれればいいと思っていたので、自分は待合室や診察室の掃除にいそしんだ。
「きゆ、ちょ、ちょっと、こっち向いてくれよ…」