君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「流ちゃん、それはダメだよ…」
きゆは寝転んでいる流人に向かって優しくそう囁いた。
「一年だけで充分……
私も、島の人達も、それ以上は望んでない…」
流人は静かに起き上がり、きゆの言葉を受け流した。
「お腹すいた~ いただきます」
流人はそう言うと、広げた弁当箱に入っているおにぎりを一口で頬張った。
きゆは、もう、それ以上は何も言わなかった。
この幸せな夢のような時間を、桜の花びらのようにあっけなく終わらせたくなかったから。
「それより、何で着替えてきたの?」
流人はいつものやんちゃな流人に戻っている。
「白衣だよ。
なんでパンツスタイルに変えたんだよ。
その恰好、可愛くもなんともないよな、マジであり得ない」
流人はそう言いながら、またポケットからスマホを取り出している。
「あんなワンピースで巡回訪問なんてできないよ。あれは、病院だけなの、残念ですけど」
流人は、きゆの白衣姿の画像をかぶりついて見ている。
「きゆ、病院に帰ったら、俺とツーショット写真撮ってよ。
あのワンピの白衣を着てからだぞ。
なんかさ~、地下アイドルを追っかけるオタクの気持ちが分かる気がする。
でも、俺、もっとたちが悪いかも」
「なんで?」
「白衣のきゆを、いつ襲おうかと考えてる」
きゆは食べていた物を喉に詰まらせた。
「もう、ちゃんと仕事をしてください」
きゆのその言葉に、流人は無邪気に舌を出し軽く微笑んだ。