君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
流人ときゆが訪れた老健施設は、高台にある広大な敷地にひっそりと建っていた。
広大な敷地を最大限に利用した二棟の建物は、平屋風の長細い造りになっている。
その内の一棟の老人ホームの方が、今日の健康診断を依頼された場所だった。
二人は正面玄関にある事務室で受付を済ませると、健康診断の会場となっている大会議室に通された。
「きゆ」
だだっ広い会議室に二人で座っていると、廊下の方できゆを呼ぶ声がした。
「はい?」
きゆは廊下の方へ出てみた。
すると、そこに、瑛太と瑛太のおばあちゃんが立っている。
「瑛太、どうしたの?」
きゆが驚いて大きな声でそう聞いた声は、会議室の中で待っている流人の耳にもちゃんと届いていた。
「ばあちゃんがここにお世話になってるんだ。
今日、仕事が休みだったから、ばあちゃんに会いに来たら、田中医院のスタッフが健康診断でここに来るって聞いて、実は待ってた」
「きゆちゃん、べっぴんさんになったね~」
瑛太の祖母はきゆの事をよく覚えていたし、きゆももちろん覚えていた。
瑛太の両親は朝から畑で働いていたため、いつもおばあちゃんが子供達のお世話をしていたから。