君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
「きゆちゃん、この島に本当に帰ってきたのかい?」
「はい、帰ってきました」
瑛太の祖母は涙ぐんで瑛太の手をさすっている。
「瑛太、良かったな~、きゆちゃんが嫁さんに来てくれるなら、ばあちゃんはそれまで長生きしなきゃ」
きゆが困った顔をして微笑んでいると、会議室の方から大きな咳払いが聞こえた。
「おばあちゃん、私、仕事だからもう行かなきゃ…
今日は、おばあちゃんも健康診断の日?」
「ううん、ばあちゃんは次の回だって言ってた。だから、きゆの顔を見に来たんだ。
ごめんな、忙しいのに…」
きゆは小さく首を横に振ると、また奥の方で咳払いが聞こえる。
「じゃあね、私、行くね。バイバイ」
きゆは瑛太と瑛太の祖母に手を振りそそくさと会議室に入ると、そこには目を細めた明らかに機嫌が悪くなっている流人がいた。
「仕事の前に何してんだよ」
きゆは流人の前に座り、ごめんと手を合わせた。
「久しぶりに瑛太のおばあちゃんに会ったの。ごめんなんさい」
流人はわざとらしく大きくため息をついた。
「あのマッチョはきゆが来るのを知っててここに来たんだろ?」
……やっぱり、そこ?
流人は確実に瑛太を嫌っている。