君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
健康診断は思っていた以上に時間がかかった。
流人の気さくな性格は、お年寄り一人一人にたっぷり時間をかけ悩みや心配事を熱心に聞き、そして、丁寧に優しくアドバイスをする。
たまにはジョークも交え、みんなを楽しませたりもした。
そこに来ている入所者もスタッフもあっという間に流人と仲良くなり、口々にありがとうと言う声が色々な所で聞こえるほどだった。
流人は何人かの体の具合を懸念して、スタッフの人に近々病院へ連れて来るようお願いした。
そして、初めての島での巡回訪問の仕事を無事に終えることができた。
流人ときゆはスタッフの人達に挨拶を済ませ外へ出ると、中庭に設置されているベンチに瑛太が座っているのが見えた。
「きゆ、終わった?」
瑛太にはきゆしか見えていない。
「うん、ずっと待ってたの?」
きゆと瑛太が立ち話をする間、今度は流人が中庭にあるベンチに座り込んだ。
それも、きゆと瑛太の真正面のベンチに座り、二人を目を細めて見ている。
「きゆ、幸喜、覚えてる?」
「覚えてるよ~」
「きゆが島に帰ってきたって教えたら、近々帰って来るって。
あいつ、隣の島で働いてるんだ」