君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆは目の前に座っている流人が気になってしょうがなかった。
「幸喜にきゆの携帯番号とアドレスを教えてもいい?
あいつ、きゆにすごく会いたがってるからさ」
きゆは小さく頷いた。
「きゆ、そろそろ行くぞ」
流人は突然立ち上がると、そう言い残して車の方へ歩いて行った。
「きゆって……
あの先生、もうきゆの事呼び捨てなのか?」
きゆは空を仰いでしまった。
ここにも保護本能丸出しの血気盛んな男がいる。
「きっと、待ちくたびれてわざと言ったんだよ。
すごく優しくて、いい先生だから、大丈夫」
きゆはそう言って瑛太と別れた。
駐車場の方へ歩いて行くと、車の前にしゃがみ込んで缶コーヒーを飲んでいる流人が見える。
「なんで、あいつに携帯番号とか教えてるわけ?」
きゆは本当に面倒くさいと思った。
流人の俺様気質は無理難題を押し付ける。
「あいつにはさ、この島に、たくさんの友達がいるだろ?
俺にはきゆしかいないんだ…
だから、きゆは俺の事を最優先に考える事。
そうじゃないと、俺は孤独で一人ぼっちで死んでしまうからな」
こうやって、私の心を掴んでいく。
俺様気質は好きだけど、寂しがりは勘弁してほしい…
だって、流人のことを放っておけなくなるでしょ?…
これが私の弱い部分…
流人を愛している隠し切れない気持ちが、いつの間にか、私自身を追い詰める。