君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆは椅子から立ち上がり、流人が沸かしていたポットを手に取った。
流人はソファに寝転がり、天井を仰いでいる。
「きゆ、俺、干からびて死んでしまうかもしれない」
きゆはクスッと笑った。
流人の言いたい事が想像できる。
「俺はさ、この島に来ていいことばかりだけど、でも、最近は、修行に来たのかもって思ってる」
きゆは淹れ立てのコーヒーを流人の前に置いた。
「きゆ、きゆちゃん…
人助けだと思ってさ、毎日、俺にキスしてよ」
きゆは散らかったままの新聞紙を丸めながら、静かに聞いていた。
「毎日キスをするのは、恋人同士でしょ?
私と流ちゃんは、恋人同士じゃないもの」
流人は寝っ転がっている足を床に置き、勢いよく起き上がった。
「きゆ、今日は、きゆに大切な話をしたいって思ってる。
ちゃんと、聞いてほしい…」
きゆは流人の真剣な顔を見て、何となく察しがついた。
ずっと後回しにしている触れたくない話…
「きゆの誕生日のあの日…」