君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆにとって、その事実こそが大きく胸にのしかかった。
やっぱり、院長秘書の友人に教えてもらった事柄は事実だったんだ…
「きゆが家で俺のことを待ってるのは分かってた。
でも、あの日は、本当にがんじがらめにされてて…
その女性の父親という人も後の食事会で合流して、なんか親も一緒のわけのわからない集まりみたいになってさ…
本当にごめん…
電話にも全然出れなかった…
きゆからの着信には気づいてたんだけど、後でちゃんと説明すればいいと思ってたんだ」
きゆはあの夜、あのまま、自宅で待っていれば、こんなに傷つくことはなかったのかもしれない。
でも、待てなかった。
大切な誕生日に、何度電話しても連絡がつかなくて、こんな事は今までなかったから事故にでもあったんじゃないかって心配で心配で、10時を回った頃、きゆは家を飛び出した。
流人の部屋の合鍵をもらってはいたけれど一度も使った事がなかったきゆは、その夜だって、鍵を使うのにためらって部屋に入れずにいた。
「本当にごめん…
きゆがマンションまで来てるなんて思ってもなかったんだ。
あんな場面を目の当たりにしたら、誰だって傷つくよな…」