君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
きゆは飲み干したコーヒーカップをキッチンへ持って行き、そして、流人の座っているソファに、少しだけ流人から離れて腰を下ろした。
「本当にごめん…
去年の12月は、きゆの誕生日の3日後から長期の出張だったし、何の言い訳も弁解もしないままボストンに行ったんだよな。
俺は、きゆが怒ってるのは一過性のものだと勝手に思ってたから、悲しい思いさせた分、年末年始の休みはずっときゆと一緒にいようって思ってた。
それで、年末に日本に帰ってきて久しぶりに病院に行ったら、今日付けできゆが辞めるって聞かされて、次の日には島に帰るって…
あれは、きゆだってひどいよ。
俺がどんだけビックリして衝撃を受けて凹んだと思ってるんだよ。
しばらくは、訳が分からなかったんだから」
きゆは静かに目を閉じて、そして小さく頷いた。
「流ちゃん、ごめんね…
私は、あの時、タクシーから出てきた二人を見て、息が止まるかと思った。
そして、そのまま、走ってその場から離れたの。
あの時は、その前にどんな理由があったのかとか、その後にただ別れただけだったとか、そんな事も考える余裕すらなくて、ただ、今日は私の誕生日だったのにって、それが悲しくて辛くて、流ちゃんの全てが何もかも信じられなくなった…」