君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
診察室にいても、二人の会話は流人に聞こえていた。
1時なると普段ならきゆの作ってきたお弁当を二人でテレビを観ながら食べるのに、最近はあの瑛太のおかげで流人は一人でお昼を過ごすことが多くなっている。
流人は、明らかにきゆに気がある瑛太が邪魔でしょうがなかった。
「流人先生、聞こえてました?」
瑛太はわざとらしくそう聞いた。
「でも、この話は流人先生には関係のない話なので、ごめんなさい。
気持ちだけは有り難く受け取っときますね」
流人は小さくため息をつくと、きゆの方を見た。
視線を感じたきゆが流人の方を向くと、眉間にしわを寄せ“早く帰せ”と目で訴えている。
「瑛太、ちゃんと私の方から院長先生に伝えとくから…
ごめんね、今日は、お昼から本田さんの所に訪問診療の日なの」
「あ、そうなんだ、悪い、長居して。
じゃ、きゆ、またメールするよ。
仕事頑張るんだぞ」
瑛太は流人の方を一度も見ずに、きゆにそう言い手を振った。
「うん、瑛太も頑張って…」
きゆは背後に感じる蛇のようなおぞましい視線を無視して、瑛太に手を振り返した。
「きゆ、仕事頑張るんだぞ、うん、瑛太も頑張って!
なんじゃそりゃ?」