君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜
結局、流人はカラオケ大会に出ることになった。
きゆと話したあの後、祭りの実行委員会と名乗る青年団が瑛太を筆頭に病院へやって来た。
いくらわがままな流人でも、あんなに頭を下げられれば断ることはできない。
この島の事は大好きだし、色々な事を経験するのはいいことなのかなと自分に言い聞かせ、この小さな島の小さなお祭りで、流人は人前で歌を披露することに決めた。
「流ちゃん、ありがとうね…
それとごめん、無理言って。
それで、私ももう行かなきゃ、祭りの準備があるから」
実行委員会の人達が帰った頃を見計らって、きゆはそう流人に伝えた。
きゆは流人の心遣いに本当に感動しもっと一緒にいたかったが、何せ時間がない。
「きゆ、ちょっとここに座って」
流人は急いで着替えに行こうとしているきゆにそう言うと、きゆは柔らかい笑みを浮かべ素直にそこに座ってくれた。
「ねえ、俺、ただじゃ歌わないから」
「え??」
「きゆからのご褒美がないと歌わない」
きゆは流人のこの二面性のある子供っぽい性格に戸惑いながら、でもなぜか愛おしい。
「……分かった、じゃ、ご褒美は何がいいの?」
きゆは予想はついたが、あえて聞いてみた。