君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



「今夜は俺のために時間を空けといて。
実行委員会の打ち上げとか、そんなの無視すること。

きゆからのご褒美が何がいいか、その時に教えるから」


きゆはご褒美をもらう方なのに態度の大きい流人を見て、クスッと笑った。
でも、カラオケ大会に出てくれる流人の心意気に、何でもしてあげたいと心から思った。



夏祭りも佳境に入り、カラオケ大会は異様なほどの盛り上がりを見せている。

流人は小さな特設ステージの脇に立ち、自分の愚かさに嘆いていた。
この島にこんなに人がいたのかと思わせるほど、たくさんの人が集まっている。
カラオケは老若男女が入り乱れ、どちらかと言えば聴かせる歌より盛り上げる歌を歌う人の方が多かった。
流人は実行員会の人達の言われるがままに、白衣を着てここに立っている。

……マジ、無理かもしれない。何で俺はここに立ってるんだ?

流人は、キャンセルになった前年度の優勝者が歌うはずだった“栄光の架橋”を歌うことになっていた。
ゆずの“栄光の架橋”はカラオケで歌ったことはあるが、そんな歌詞を見ないでなんて到底無理だ。
流人の手のひらには、きゆが、その歌の歌詞をびっしりと書いてくれている。


「じゃ、最後になります。
急遽、前年度の優勝者がキャンセルになり、その枠に、4月からこの島に赴任してくれた田中医院の池山流人先生が歌ってくれることになりました。

流人先生、どうぞ~~~」






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