君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜



流人はあれよあれよという間に皆に称賛され、優勝トロフィを手にしていた。
きゆと一緒にふくろ詰めをした一番いい金額の商品券を手にし、流人を囲んでいる島の人達に何度も頭を下げる。

今夜は瑛太も、何度も流人に握手を求めてきた。
流人はぴちぴちのTシャツを着ている瑛太の事は相変わらず苦手だったが、でも差し伸べられた手はしっかりと握り返した。

皆にもみくしゃにされながらも、流人はずっときゆを捜しているのに、真っ先に来てくれてもよさそうなはずのきゆは、ちらりとも姿を見せない。


「では、お祭りの最後は花火になりますので、皆さん、海の方を見て下さい」


アナウンスの声が響き渡たり、広場を照らしている灯りがひとつずつ消えていく。
流人はきゆを捜して広場の中を歩き回った。
灯りが消え暗闇が濃くなると、ますます人の顔が見えなくなる。

花火の上がる音が聞こえると、海の真上の空に大輪の花が咲く。
きゆを見つけられない流人は、花火を背にして病院へ向かって歩き出した。
きゆがいなければ花火を見る気にもならない…

広場から離れた小道を歩いていると、後ろで流人を呼ぶ声がした。
綿あめを手に持ったきゆが、流人の方へ走ってくるのが見える。


「流ちゃん、花火が上がってるのに、なんで帰るの?」



「だって、きゆがいないから…」



「流ちゃんの大好きな綿あめを買ってたの…」


きゆがそう言って綿あめを流人に手渡そうとすると、その手首をつかまれ流人の胸に引き寄せられた。


「花火はきゆと一緒に見たかったんだ。 
急に消えるなよ」


二人はその小道の脇に腰かけて、綿あめを食べながら、真上に上がる大きな花火を寄り添い見上げた。




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