HEAVEN ROAD
「無事に到着ぅ!!」



全然無事じゃねぇ。



風で涙は止まらないし、鼻水酷いし、何より寒い。



「カナちん行こう」



「……」



今日はまっすぐ教室だな。



屋上に行って、これ以上体を冷やしたらまた風邪ぶり返すかもしれねぇし……



翔は横でごちゃごちゃ話し掛けてきてたけど、あたしは聞いたふりして体を温めることばかり考えてた。



翔にバイクはやだってハッキリ言えばいいんだけど、翔が責任を取るって言ってたから、豊の車には乗れないのかもしれないし……



アイツらの決まりがよくわからないから、何も言えずにいた。



これ以上ややこしいことに巻き込まれるくらいなら、寒いのくらい我慢できそうだし。



後少しで温かい場所にたどり着けるから、早足になっていたあたしの横を豊が通り過ぎた。



「豊待て!!」



あたしは鞄の中に手を突っ込みながら豊を追い掛ける。



「カナちん?どうしたの?」



「豊これ」



「あっ?あぁ。ってお前そのまま持ってきたのか?」



「ん?このまま鞄に入れてきたけど?」



「普通袋に入れるとか、なんかに包むとかしねぇ?このままって……」



「そういうもんなの?」



あたしが差し出したタッパーを「まぁいっか」と言いながら豊は受け取った。
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