HEAVEN ROAD
あたしの涙がすっかりと乾いた頃に佐枝子さんは居間へと繋がる扉を開いた。
「ダイ!!カナのこと送っていってあげて」
「わかりました」
「大輔(ダイスケ)さん、俺もいいっすか?」
チータが話しに割って入る。
運転席のお兄様は大輔さんね。
あたしの名前を覚えてくれたのに、相手の名前を知らないなんて失礼だから、あたしは何度も頭の中にインプットした。
「お邪魔しました」とチータが佐枝子さんに頭を下げると「こちらこそ迷惑かけたね」と玄関まで見送ってくれる。
豊の周りにいる人いい人ばかりだ。
こんな人たちに囲まれて生活している豊が羨ましい。
それなのにアイツときたら、好き放題しやがって……
こんな風に温かな人たちに囲まれることは当たり前なことなんかじゃないのに。