HEAVEN ROAD
玄関を開けると、奥の部屋から飛んでくるあいつ。



あたしの顔を見るなり「何かあったのか?」と険しい顔つきをする。



「何もないけど」



「じゃあ何でこんなに遅いんだ?」



「色々と合って」



「その涙の跡は?」



涙の跡?



さっき豊の家で泣いたときのものだろう。



「あんたに関係ないし」



「俺はお前の事を預かっている身だ。何かあってからじゃ困る。また……」



あたしは話している途中で声をかぶせた。



「あんたには迷惑かけないよ!!」



そう言って自分の部屋に入る。



その先は聞きたくない。


自分の身に何が起こっていたかなんて、もう忘れてしまいたいんだから。
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