HEAVEN ROAD
エプロンで手を拭きながら、あたしのためにドアなんか開けてくれているお母さんに深々と頭を下げた。



あたしはママのこんな姿を見たことがない。



エプロン姿も見たこともなければ、あたしのために飲み物を入れてくれる姿も……



なんだか急に悲しくなる。



あたしのママはこういう人だとあの日諦めたはずなのに、他人の母親を見れば羨ましくて仕方ない。



あたしが居間を出ると階段の下で腕を組んだ豊が待っていてくれた。



「部屋どこ?」



「上」



豊の部屋は広く、あたしの部屋の2倍はある。



こんなにいい暮らしをしてるのに、家を出るだなんて豊は我侭だな。



「座れば?」



「うん」



座ればって言ったって椅子なんかないし……



引きっ放しの布団の上に座るのもな……

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