HEAVEN ROAD

それからというもの、あたしは用もないのに1日1回は生活指導室を訪れていた。



有田の顔を見ると気持ちが落ち着く。



悲しみも苛立ちもスッとどこかに消えていくんだ。



特別な事を話すわけではない。



ただ、何を食べたとか天気の話とか……



そんな当たり前の話があたしには心地よくて、いつまでもここに居座っていたい気持ちになる。



「カナが卒業するまで俺はここにいないぞ」



「えっ?なんで?」



「俺は後2年で定年だ」



「そうなんだ」



突然の有田の言葉にあたしは落ち込んだ。



だって、この場所に有田がいてくれないなら何の意味もない。



「そんな顔するな。俺がいなくなる頃にはカナにはもっと居心地のいい場所ができているから」



どうしてわかる?



あたしの心の中そんな風に見透かさないで。



あんたとの別れが余計に寂しくなるよ。
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