HEAVEN ROAD

「お、女だよ。見ればわかるだろっ」



「まぁ、一応見た目は女だな」



一応ってなんだよ。



あたしは正真正銘女だっつーの。



「ゆ、ゆ、たか……そろそろ、離して……」



こんな姿で今までどおりのやり取りをするのはさすがに限界だ。



口先だけはペラペラと動いているけど、その他の部分は固まったように動いてくれない。



「わ、悪りぃ……」



離された手を潜り抜け、あたしは元いた場所へと戻る。



さっきまでは聞こえていなかった、カチカチっという時計の音だけが静まり返った部屋に響き渡る。



何か喋らなきゃ、この空気に耐えられないんだけど、こういうときに限っていい言葉が浮ばない。
< 249 / 877 >

この作品をシェア

pagetop