HEAVEN ROAD
「お、女だよ。見ればわかるだろっ」
「まぁ、一応見た目は女だな」
一応ってなんだよ。
あたしは正真正銘女だっつーの。
「ゆ、ゆ、たか……そろそろ、離して……」
こんな姿で今までどおりのやり取りをするのはさすがに限界だ。
口先だけはペラペラと動いているけど、その他の部分は固まったように動いてくれない。
「わ、悪りぃ……」
離された手を潜り抜け、あたしは元いた場所へと戻る。
さっきまでは聞こえていなかった、カチカチっという時計の音だけが静まり返った部屋に響き渡る。
何か喋らなきゃ、この空気に耐えられないんだけど、こういうときに限っていい言葉が浮ばない。