HEAVEN ROAD
あたしは豊の切なげな声に引き寄せられるように玄関の鍵を回した。



「豊?」



「カナ……」



ドアを開けた瞬間、あたしの視界は見えなくなり豊の匂いに包まれた。



「勘弁してくれ」



そう言ってあたしの肩に顎を乗せる。



「昨日からどれだけ心配したと思ってるんだ」



「ごめん……」



小さな声で呟くと、体を離した豊はあたしの頬にそっと触れる。



「元気ならそれでいい」



その一言にだろうか……



頬に触れた手が冷たかったからだろうか……



涙がこぼれそうになる。
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