HEAVEN ROAD

「顔が見たかっただけだから。じゃあな」



そう言うと豊はあたしに背を向けた。



「待って!!」



きっと豊はずっとここで待っていてくれたんだ。



日が落ちたばかりで、まだ気温はそこまで下がっていないのに、豊の手は冷たかった。



体も冷えきってるはず……



「どした?」



首だけをこちらに向ける豊のことがどうしようもなく気になる。



あたしのために、どうしてこんなことをしてくれるのか……



胸の奥が苦しいよ。



「上がっていかない?寒かっただろ……」



断られることが怖くて段々と小さくなる声。



「いいのか?」



豊の言葉に急に嬉しさが込み上げる。
< 302 / 877 >

この作品をシェア

pagetop