HEAVEN ROAD
あたしは今まで誰かの言葉や行動で、こんなにも心が揺れ動いたことなどあっただろうか……



「ちらかってるけど、上がって」



「おう」



散らかっていたはずの居間は綺麗に片付けられていた。



昨日、祐樹があたしを待っている間に片付けたんだろうな。



「適当に座って。コーヒーでいい?」



「あぁ」



ウチに家族以外の人がいるなんて可笑しな感じ。



あたしの家じゃないんだけどさ……



昔、ママのご機嫌をとるためによくコーヒー淹れてたな。



お湯を注ぎながら、ふと過去にタイムスリップしてしまう。



あたしはコップに水道水を入れて、ソファーの横に腰をおろした。



「寒くない?」



「あぁ。本当にお前は寒いのに敏感だな」



「そうかもね……」



なんだか、豊に話したくなってきた。



白い目で見られると思う気持ちは変わらないけど、こうして何かを誤魔化して喋っていることが辛い。



豊はいつだって、あたしに真っ直ぐでいてくれるのに。

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