HEAVEN ROAD
「家でいいのか?」



「あぁ。頼む。」



あたしが車の中に乗り込むと、車はすぐに動き出した。



そして、祐樹が話し掛けてくることもない。



あたしは安心したせいか、気を張って待っていたせいか、物凄い脱力感におそわれいつの間にか目を閉じていた。



フカフカと気持ちのいいシートに揺られながら、楽しい夢を見ていた気がする。



恐怖も不安も孤独も……



何も感じないなんて、夢の中とわかっていても久しぶり過ぎて幸せだ。



「カナ、カナ」



それなのに……



あたしの幸せを遮った男が目を開けると視界いっぱいに広がっている。



しかも、あたしのこと睨んでるし。



睨みたいのはあたしのほうだ。

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