HEAVEN ROAD
あたしが帰る場所はここじゃない。



豊が待つ家に帰らなきゃいけないのに、豊と顔を合わせたくないあたしはゆっくりと階段を上った。



都合が良すぎるよな。



祐樹に無断でこの家を出ていって、豊と気まずくなれば簡単に帰ってくるなんて誰の気持ちも考えていない。



ため息を吐きながら玄関のドアを開けると「さっさと入れ」と祐樹に手招きされた。



ズルくて卑怯なあたしは今日は祐樹の言うことを素直に聞く。



自分自身が嫌になるよ……



「何か飲むか?体冷えてるだろ?」



「あーうん。それよりどうしてあそこがわかったの?」



「あっ?」



キッチンで飲み物を用意している祐樹がこちらに顔を出す。



「何で居場所がわかったの?」



あたしはさっきよりも少し大きな声でそう言った。



「一志の家から出て川っていったら豊平川しかねぇからな。一志の家の近くから、橋を一つずつ探した」
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