HEAVEN ROAD
「じゃあそろそろ行きますね」



大輔さんはあたしに頭を下げ背を向けた。



「大輔さん。ありがとう」



あたしの言葉に振り向き笑顔を見せてくれる。



大輔さんの大きな背中を見送った後、あたしはお弁当を見つめる。



「カナちん、食べないの?」



「食べる」



用事があるならそれでいい。



帰ってこないのも仕方ないし、チームで何かあったのかもしれない。



でも、豊の口から聞きたかった。



すぐに行くって言ったのに、大輔さんに伝言なんかさせて、そのことが許せない。



てめぇの口で言いにこい。



あたしは乱暴にお弁当を広げると、中身を次々に口の中に放り込む。



「翔も食べなよ」



「えっ?」



「腹減ってるだろ?あたし一人じゃ食べきれないし」



「そう?じゃあ遠慮なく」



あたしのために腹をすかして待っててくれたんだから、これくらいしないとな。



「うまい!!」



「だろ?」



「いいな。こんな旨い料理食えて。豊は幸せだよな」



翔の言うとおり、あたしの目から見ても豊は幸せだと思う。



優しいお母さんに、小さくたって一所懸命働いてるお父さん、それに兄妹仲もいい。



温かい家族って感じがする。
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