HEAVEN ROAD
テーブルの上には紙切れ一枚。



汚い字で殴り書きされた電話番号は豊の実家のものだろう。



あたしは豊に手を貸してもらっただけで、昔に戻ったわけでもなんでもない。



だから、同じ空間で朝を迎えることはないんだ。



それはわかってるのに……



なんで涙が溢れてくるんだろう。



恋人に戻れないことなんてわかってる。



そして、不器用なあたし達は友達にすら戻れない。



それもわかっているんだけど、置いていかれたこの部屋で、豊の匂いも温もりも残るこの部屋で、一人で朝を向かえることがどうしようもなく切なかった。


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