HEAVEN ROAD
「それはそうだろうな。ヤクザを普通と言える人などいないだろう」



あくまでも冷静に話を続けるお父さん。



「質問に答えろよ!!あんたは自分のこと普通って言えんのか?一志さんの家と比べて勝ってるとでも思ってんのか?」



「思っている。ヤクザに比べたら父さんは汗水たらして働いてる」



「最低なヤロウだな!!」



豊は思い切り立ち上がり居間を出て行った。



勢いよく立ち上がったせいで、椅子が後ろに倒れてしまっている。



シーンと静まり返る部屋。



「……っう」



「お母さん?」



「……っごめんなさいね」



お母さんは顔を覆い泣き始めてしまう。


あたしは大きく深呼吸をした。



「お父さん。あたしが言えることじゃないですけど、話してもいいですか?」



「なんだい?」



悲しそうな瞳であたしを見つめるお父さんは豊にそっくりだった。




「一志さんに会ったことありますか?豊の周りにいる人たちに会ったことありますか?」



「ないかな」



あたしも始めはお父さんと同じだった。



外見だけで怖い人。



自分とは違う世界の人。



そう決め付けていた。



「ヤクザも暴走族も悪いことかもしれません。でも、それをなしで見てくれませんか?一志さんも豊の友達も、お父さんが言う普通の家の子より温かいです」



「温かい?」



お父さんは首をかしげる。
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