HEAVEN ROAD

あたしの言葉にフッと表情を緩めたお父さんを見て、あたしは少しホッとした。



でも、伝えたい事を伝えきれていないもどかしさが残る。



勉強をきちんとしてないのが悪いのだろうか?



それとも人と関わるのを避けて生きてきたから?



原因は何でもいいけど、あたしはもっともっと伝えたかった。



「カナさん。まだ殆ど手をつけていないから、食べていって」



あたしの体に触れていたお母さんの手がゆっくりと離れた。



「あ、でも、豊が気になるので……」



せっかくの好意をこんな言葉で返すのは嫌だったけど、今は豊の様子が気になって、食べていても味などわからない。



「そうね。それならちょっと待って」



お母さんは洋服で涙を拭い、台所へと行ってしまった。



黙々と食べ続けるお父さんを前にあたしはキョロキョロと辺りを見回す。



シーンとするこの空気に耐えられなくて、渋々料理に手を伸ばそうとしたその時



「上に持っていって食べて頂戴」



キッチンから出てきたお母さんはあたしにテーブルに並べられているお重箱より一回り小さいお重箱を手渡してくれた。

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