HEAVEN ROAD
「っえっと……」



誰かのために別に作ってあったものではないのかと、差し出されたお重箱を受け取ることが出来ないでいる。



「これは佐枝子が来たら持たそうと思っていたの。でも、来なかったから……食べてしまって」



苦笑いをするお母さんを見つめながら「ありがとうございます」とお重箱を受け取った。



「色々と生意気なこといってごめんなさい」



あたしはお父さんに向かって頭を下げ、ドアのほうへと振り返る。



「またいつでも来てくれ」



ドアノブに手をかけたあたしにお父さんは一言そう言った。



「はい」と振り返ったあたしのほうは見ていないけど、お父さんの一言に何だかジーンとしてしまった。



豊、いいお父さんとお母さんだよ。



それをあんたにもわかって欲しい。



ゆっくりと廊下へ出るとあたしの視界には……

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