HEAVEN ROAD
「これは大した事ない。だから離せよ」



あたしはブンブンを手を動かすけど、豊は力を緩めてはくれない。



あたしが動くたびに眉間にシワが寄る。



今は豊に構ってる暇はねぇんだ。



頼むから離してくれよ。



「話すまで行かせない」



「なら、後で話すから豊も来いよ。時間がねぇんだ」



珍しく素直にあたしの言う事を聞いてくれた豊はあたしの腕を引っ張りながら、明美の教室へと向かっている。



豊が歩くだけで騒がしくなる廊下。



そして、冷たい視線があたしへと向けられる。



もうだいぶ慣れたけど……



気分がいいものではない。



「着いたぞ」



豊がそう言うのと同時にあたしは教室の中を覗き込む。



「いない」



「明美か?」



「あっ!!でも鞄がある」



「はっ?」



トイレだ……



あたしは豊の手を振りほどき、女子トイレの中へと飛び込んだ。

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