HEAVEN ROAD
「持ってません」



あたしがジャージなんて持ってきてるはずがない。



なんせ体育には出たことがないのだから。



何の役にも立てない自分にガックリと肩を落としていると保健室のドアが開いた。



バタバタと足音を立てて明美の側に駆けつけたのは……



「秀……」



ハァハァと肩で息をしながら、明美のベッドの前にしゃがみ込む。



「明美」



そして、ゆっくりと立ち上がった秀は明美のおでこに優しく触れた。



その手が震えていて、あたしは見ていられなかった。



きっと秀は今でも明美が好きなんだ。



チータの元へと行ってしまった明美でも秀は明美を想っている。



あたしはその光景を見ているのが辛くて、保健室を出た。



明美のためにジャージを探さなくちゃ。

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