HEAVEN ROAD
「どんなに嫌がらせをされても、涙一つ流さないあたしの態度が美央の怒りに火をつけてしまったんだと思う」
あたしは受けなければいけない罰を受けていたんだから、涙なんて流さなかった。
仕方のないこと。
ただそう言い聞かせ、歯を食いしばった。
豊は殆ど何も言わずにあたしの話を聞いてくれているけど、顔付きが段々と変わっていく。
あたしの背中を摩っていてくれた手も膝の上で拳を握っている。
それでもあたしは豊を見ないようにして話を続ける。
「美央が先頭になって、いつしかあたしに暴力を振るうようになってきた。暴力も段々とエスカレートしていって、本当に死ぬんじゃないかって何度も思った。でも、あたしは生きてた。生きてるってわかる度に明日に怯える。その繰り返しに心身ともに疲れ果てたとき……あたしは入院したんだ。それで……」
「待て。入院ってなんで?」
あの日は雪が降っていたような気がする。
クリスマスを耐えれば、あと少しで冬休み。
だから、気を抜いていたのかな?
「美央に話があるって放課後呼ばれたの。逃げたって仕方ないから、あたしは言われた場所へと行った」
そこは用務員のおじさんが清掃道具を閉まっているプレハブの前だった。
鼻水なんかは凍ってしまいそうに寒くて、コートを着てこなかった事を悔やみながら美央を待っていた。