HEAVEN ROAD
今、あたしの隣には豊がいるんだけどあたしの頭の中は完全にあの頃に戻っていた。
ただ毎日を消化しているあの頃に。
「ママはね。そんなあたしに何も言わなかった。でも、部屋から出なくなって半年くらいが過ぎた頃……ママとお父さんの関係がうまくいかなくなったみたいで、ママは凶変してしまった」
ママとお父さんがうまくいかないのはあたしが部屋から出ないせいだって、毎日のように怒られた。
それでも、あたしは学校へ行く気にも部屋から出る気にもなれずにママとお父さんは離婚した。
「ママの離婚はあたしのせいで、あたしが部屋から出なかったせいで、ママの幸せはあたしが奪ったの。これが豊に言えなかったあたしの過去」
話が終わるとあたしはフッと現実の世界に戻ってきていた。
隣に座る豊の反応が怖い。
豊にもあの視線を向けられ、罰を与えられるのかと思うと体が震えてくる。
「最初の質問に答えてくれないか?」
最初の質問?
「何で明美がトイレにいるってわかった?震えていた理由は?」
あぁ。
確かにそんな事を聞かれていたような気がする。
「何で震えるかはわからない。考えてしてる事じゃないから。トイレにいるってわかったのは勘。あたしもよくトイレに連れ込まれていたから」
便器に顔を突っ込むのはそんなに気分がいい事なんだろうか?
イジメをテーマにしたドラマを見ていたときにもそんなシーンがあった。
あたしは便器に頭を入れられるくらい平気だったんだけどな。
あの視線に比べれば。