HEAVEN ROAD
時計の針が9時を差す少し前に豊と秀は家に戻ってきた。
帰ってくるとすぐに2人はシャワーを浴び、再び出かける。
「行くぞ」
「うん」
あたし達は明美の病院へと向かった。
明美は既に目を覚ましていて、あたし達を視界の中に入れると涙を流した。
「ごめんなさい」と何度も謝りながら。
あたしはそんな明美をきつく抱きしめる。
抱きしめる事以外に、上手い言葉も見つからなかったから。
「カナ。そんなに抱きしめられたら息出来ないけど」
あたしの腕の中から聞こえた明美の声はついこの間までと何も変わっていなくてホッとする。
人はそんな簡単に変わるものではないのはわかっているんだけど……
「大丈夫か?」
「秀ちゃん……」
収まったはずの明美の涙が秀によって再び流れ始める。
「秀。泣かすなよ」
「そんなつもりじゃないし」
「でも、明美が泣いてるだろう?」
「それは……」
あたしと秀のやり取りを見て明美がクスクスと笑い出す。
そんな明美に秀はやっといつもの笑顔を取り戻したんだ。