HEAVEN ROAD
「体のことばかりケアしたってしょうがねぇだろ?明美がこれから抱えていかなきゃいけないものは心の傷だよ」



これはシナリオにあった台詞ではない。



あたし自身明美を見ていてそう思ったんだ。



「その傷は海に行く事で癒えるのか?」



豊が横から口を挟む。



「癒えはしない。でも、楽しい思い出も思い出せるだろ?あの頃は辛い記憶もあったけど、それだけじゃないって思えるだろうが」



あたしは明美の用意していた台詞などすっかり忘れ、自分の思うがままに話し始めてしまう。



「でも、怪我が悪化したら……」



秀はまだ頭を抱えたまま。



「体についた傷は時が解決してくれる。でも、心の傷はそういうわけにはいかねぇ。体の事を考えるのはわかるけど、秀がこれから支えていかなきゃいけないのは明美の心だろ?体は医者に任せとけばいいんだよ」



「わかった。海行くぞ」



そう言ったのは豊だった。



「おい!!」



「もう決まった事だ。日程は医者と相談してだな」



「マジかよ」



「あぁ」



秀はまだ納得していなかったみたいだけど、豊の強引さには勝てないみたいで海行きは決行となった。
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