HEAVEN ROAD
ジュンは何度も何度も豊を殴り続けた。



普通なら倒れてしまってもおかしくない。



でも、豊は膝さえ付かずにジュンの拳を受けていた。



もう見たくない……



豊のこんな姿、あたしは見ていたくない。



音を立てないように、ジュンの後ろへ回り込んだあたしは宗にされていたように握りしめていたナイフをジュンの首元に当てた。



大きな笑い声をあげながら、気が狂ったように豊を殴りつけているジュンには周りの様子は見えていないようだ。



首に違和感を感じたのか、ジュンの動きが一瞬にして止まる。



「どういうことだ?」



ジュンは宗のほうへと思い切り振り替える。



宗はあたしの肘うちが効いたのか、まだ蹲ったままだ。



「ジュン。次に動いた時はあんたの首元にこのナイフを突き刺すからな」



「アハハ~本当に手に負えない女だな。こんなことは想像もしていなかったよ」



「残念だったな。あたしは大人しく捕まっていられるような性格じゃないんでね」



強気な口調とは裏腹にナイフを持つ手が小刻みに震えてしまう。

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