HEAVEN ROAD
そんなあたしの目を真っ直ぐに見つめる男は、あたしが心から愛した無愛想な豊。



一歩一歩ゆっくりと近づいてくる豊に今すぐにでも飛び付いてしまいたかった。



あんたは多くを語りはしないけど、総長になった理由が心底わかる。



何かを訴えるようなその瞳にあたし達は心を揺さ振られ、引き付けられていくんだ。



そして、無条件に安心感を得ることが出来る。



あたしはあんたの側でなら何が起きても怖くない気がするよ。



ジュンの前でピタリと足を止めた豊はそっとあたしの手に触れた。



震えないようにすべての神経と力を注いでいたあたしの右手に手を重ねる豊。



その瞬間にあたしは崩れ落ちそうになる。



張り詰めていた糸が切れるように、緊張感が体から抜けていくんだ。



「もういい」



豊の優しい言葉と同時に後ろから誰かに肩を抱えられた。



力強く優しくあたしの肩は誰かに抱かれている。

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