HEAVEN ROAD
一瞬の出来事だった。



あたしの手から豊はナイフを取り上げ、あたしの体は引き離される。



それと同時に秀に取り押さえられるジュン。



あたしは「カナさん」と何度も呼び掛けられながら床に腰を下ろした。



「カナちんのお陰で助かったよ。ありがとう。もう大丈夫だから、ここに座ってて」



そう言ってあたしの体を抱き締めてくれていたのは翔だった。



顔には沢山の傷を作りながら、あたしの体を擦ってくれる翔。



「カナちんをここから一歩も近付けるな。何かあったら体張って守れよ」



「はい!!」



大勢の返事がこだまする倉庫で戦いが幕を閉じようとしていた。



豊。



あたしには勿体ないよ。



こんなふうに守られるなんて、勿体なさすぎて涙が出てくるだろうが。



あたしは止まらない涙を何度も拭い、戦いの結末をこの目でしっかりと見届けた。

< 829 / 877 >

この作品をシェア

pagetop