HEAVEN ROAD
あたしは自分名義の通帳にいくら金が入っているって事をなんだか知りたくなくて、お金の事はすべて祐樹と豊に任せておいた。



「これでチータの家族が少しでも楽になるといいな」



家を出て、あたし達の住む豊のアパートに向かいながらあたしは寒空を見上げた。



「お前はチータのことなんてすっかり忘れてたみたいだけどな」



「それを言うな。反省してるんだから」



豊の言葉にあたしは再び落ち込んでいく。



「でも、お前が助けた事に変わりはない。言った言葉に嘘はなかったってことだ」



「違う」



「ん?」



豊の手から伝わってくる温もりを感じながらあたしはマフラーの中に顔を埋めた。



「あたしが助けたわけじゃない。祐樹の父さんが助けてくれたんだ。あたしは結局口ばっかりで何も出来ない」



そう。



一人では無力で弱虫なあたし。



ただ、あたしは今回たまたま運がよかったからチータの役に立てただけ。



「それもお前の力なんじゃないか?」



「どういうこと?」



あたしは視線だけを豊のほうへと向けた。



首を動かすと冷たい空気が首から流れ込んできて、あたしの体を冷やしてしまうから。


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