HEAVEN ROAD
「ここまで育ててもらって、好き勝手やってこれたのも親父達のお陰だ。だから、工場で働く事にした」



「そっか」



「矛盾してるか?」



「ん?何が?」



豊があたしに聞きたい事はわかっていた。



でも、あえて聞き返したんだ。



豊の口から言うべき事のような気がして。



人は頭で考えている事と、言葉にすることでは違う意味を持つと思う。



考えている事と同じ内容を口にすることで、それは違う意味になっていくんだ。



きっと、言葉にして喋るってことから何かが生まれるんだと思う。



「俺は親父のやり方が気にくわねぇ。親父の生き方も好きじゃねぇ。でも、そんな親父と同じ人生歩もうとしている俺は矛盾しているか?」



「してないよ。お父さんとまったく同じ人生を歩んだとしても……それは同じ人生じゃない。それに、まったく同じ人生なんて歩みたくたって歩めないんじゃないか?豊とお父さんは生きている時代も性格も関わっていく人間もまったく違うんだから」



「そうか」



「うん」



すすり泣く声がいたるところで聞こえる校舎からあたし達はボーっと校門のほうを見つめていた。



未来のことは何もわからない。



でも、今を信じて未来まで行くしかないんだよな。

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