HEAVEN ROAD
時がゆっくりと流れている気がするくらい、穏やかな中「カナちゃん」と消えてしまいそうな小さな声があたしの耳に微かに届く。



あたしは声のしたほうへ振り返ると、千に体を支えられ泣きじゃくる萌の姿が映る。



「萌……」



あたしは立ち上がり、萌のほうへと近づいた。



あれ以来、萌とも千とも口を利いていない。



変な緊張感で、背中が汗ばんでくる。



「萌。泣いてないで話せ」



千が優しく萌の背中を押すと、萌は震えながらあたしのほうへと歩き出した。



「カナちゃん。ごめんなさい」



そして、膝と頭が付いてしまいそうなほど萌は深く頭を下げる。



「な、なに？萌、顔上げて」



「ごめんなさい。本当にごめんなさい」



より一層泣き出す萌にあたしはどうしていいのかわからずにあたふたしていた。



萌が何に謝っているのかもわからないし、何でこんなに泣いているのかもわからない。



何かあったのだろうか？



「おい。話があるなら泣くな。何言ってんのかわかんねぇぞ」



目の前でか弱い萌が肩を震わせて泣いてるって言うのに、豊は横から萌をますます泣かすような台詞を吐く。

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