御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
「そっか。ハイスペックな男性にも悩みはあるんですね」

からかうような返事にも係長の真っ直ぐな視線は変わらない。

「正直、こんなに真剣に好きになったのは初めてだから。どうしても幸せにしたいのに、どうしたら守れるのか傷付けないですむのかが分からないんだ」

情熱的な言葉に動きを止めた私の横で、ガシャンッとカトラリーが音を立てた。


「も、申し訳ありません!あ、あの、失礼します。オムライスです」

出迎えてくれた時の落ち着きは跡形もない。挙動不審な動きで、店員さんがオムライスと2人分のカトラリーをテーブルに並べてくれる。

首まで真っ赤になってるし。この挙動不審な動きは係長の言葉を聞いちゃったせいだろう、と申し訳なくなる。

係長もその事に気付いて気恥ずかしくなったのだろう。心なしか赤くなった顔で「すいません」と小さく謝った。

「話、食事の後にしようか?その‥‥店員さんにも迷惑かけちゃうし」

「そう、ですね。先ずは食べましょうか。冷めちゃいますし」
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