御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
井深さんも同意してくれる。

「それにこれから暑い時期です。濃厚な料理はあまり受け入れられないんじゃないでしょうか」

「なるほど。では、鈴木さんはどういうモノがいいと思う?」

「香りと甘さを楽しむならやっぱりスイーツがいいと思います」

係長の問いかけに、ずっと考えていた事を話す。

初めてサンプルを直接見て素焼きの商品を食べた時、私はその強い香りと甘さに驚いた。
この香りと甘さこそが一番の売り。それはチームの考えでもある。

「スイーツねー。でも、それだけで押すのは弱くないかい?」

尾関さんの心配は当然だ。利用範囲が広くないと使い勝手が悪いと受け取られてしまう。


「そうですよね‥‥」

さっきまでの勢いもなく、私は眉尻を下げて同意した。

私もそれは分かっているのだ。でもそれ以外に特徴を生かす使い方が浮かばない。
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