御曹司様のことなんて絶対好きにならない！

満面の笑みを浮かべたまま、係長は続ける。

「昔に流行ったナタデココって知ってますか？あの食品は利用範囲がとても狭かった。ヨーグルトやゼリー、液体に混ぜるだけです。
杏仁も、中華デザートの杏仁豆腐以外にはほぼ使われない。
それでもこれらは使われ続けている。その食感、味、香りが好きだという層がいて、食べ続けるから使われ続ける」

「そうか！代用出来ない特徴が浸透すれば、それを求めて使われ続けるんだ！」

井深さんが興奮して大きな声を出した。

「そういう事です。もちろん、この方法を成功させるには食材にそれだけの特徴と独自性がないといけない。でも、今回ならいけると思いませんか？」


井深さんと尾関さんは納得した様子で深く頷くと、すぐに資料を再度確認して必要な情報のピックアップに入った。


でも私はまだ動けない。
あまり営業の知識がないせいもあるだろう。でも言ってる内容より、自信満々に言い切る係長の姿に、いける！と信じてしまった。
係長のそんなオーラに圧倒されたんだ。